そだてる

「東京に行くと栄養を吸われる!?」九大生が帰ってきやすい糸島の街づくりとは(後編)

新旧九大生座談会、後編をお送りします!
前編はコチラhttps://itofessional.com/2022/03/21/talk-8/

「修学旅行で見た東京の絵面が、もう、頭の中に」

――結構、九州から人材流出してるんですかね?

大堂:そうだね。やっぱり基本、みんな外に出たがるね。

関口:それはでも、九州の人特有の傾向な気がします。もともと福岡の人、やたら東京志向強いなって。すごいですよ。

――就職でも、やっぱ東京を目指すって感じなのかな。

関口:そうなんですよ、なぜか大阪じゃなくて。東京、行ってみたいんだろうなって、すごい感じて。

――憧れがあるんかな?(※大阪出身)

大堂:やっぱ、憧れあるよね。関口くんは群馬出身だから関東の感覚はわかるだろうけど(※熊本出身)。

西:ありますね。だって修学旅行で見た東京の絵面が、もう、頭の中に(※長崎出身)。

関口:こっちからすると、週末に電車で遊びにいけばいいじゃん、ぐらいの感覚だけど、距離ってこんなにも人の価値観を変えるんだっていう。

――九大に来てる人は、九州の人が多いですか?

関口:そうですね。九州、沖縄で50パーセントぐらい占めて。残り5割は全国津々浦々から、四国、中国地方とか。

大堂:自分は、一回外に出るのはいいと思う。やっぱり出ないとわかんないからね。井の中の蛙みたいになっちゃう可能性もあるから。東京とか大阪とか海外とか出て、その後、糸島に、大学がある場所に戻ってくる。Pターンって言ってるんですけど、Pの字のようなUターンを描くのが進めばいいなと思ってるのね。糸島のためにっていうのもあるし、また自分がいるとこにも戻ってきてほしいなって。それが熊本大学だったら、熊本大学でのPターンがあってもいいと思うし。

――大学時代過ごした街に戻ってくるみたいな。

大堂:全国的に流行ればいいなって。そういう価値観が広がったら、年収で場所を選ぶとか、東京に仕事があるから選ぶっていう価値観じゃない人が増えそうだなと思って。

関口:僕は大学生活で価値観が生まれて、その人間が形成されて、就職したときにそれが役に立つのが理想だと思ってるんです。京都だったら、まさにそうじゃないですか。京都の街で何か見たものって、絶対、将来どこかで価値観として結び付いてくるんで。でも、ここ、ないと思うんです。それがすごい嫌で。

――確かに、京都はそうだね(※京大出身)。

関口:本当にないんですよ。かわいそうなのは、真面目な学生ほど大学との往復だけになって、一生懸命勉強したことを企業で評価してもらうんだけど、そこが抜け落ちてるんですよね。そういう人たちが社会に出たとき、僕が上司だったら「この学生、面白くねえな」って正直、思っちゃう。

――なるほど。

関口:それってすごいむなしいと思うんですよね。それこそクラブとか行って遊んでるやつのほうが、まだ文化に触れてるんで。そういう意味で、箱崎と六本松にキャンパスがあったときのほうが文化はあった。

――大学で培ったものが勉強以外ないって状態なんだ。今の九大にそのまま普通にいると。

関口:結構、いちゃうという認識ですね。ただ、腐っても九大だから、実はアグレッシブにやったら何でも手に入る環境にはいる。図書館とか留学の機会とか、フル活用したらまじで、東大とかよりも下手したらチャンス転がってる。九州独自の奨学金とかネットワークとかも結構あるんで、そこをうまく活用できてたらたぶん、真面目にやり続けてても楽しい。

西:うん、そうですね。

関口:俺も学部3年のときにダーツとかビリヤードとか行って、初めて遊びの世界を知って。時間をつぶす価値観を知って、時間をつぶすって、最大のぜいたくだと思って。

――なるほど。

関口:割と多いんです。大学行って、家帰ってゲームして、スマホいじって、課題やって、だけの生活してる人。

――西くんも、周りにあんまり遊んでない人、結構見る?

西:そうですね。もともと僕も、あんまり遊ぶような人じゃないので。

――遊ぶっていうか、大学でいろんな経験をしたほうがいいよねって話だよね。

関口:酒飲みとかもそうで。これ、まじな話、研究室の飲み会で露呈するんですよ。その人が積み上げてきたものが。先生、お酒ついだりとかしてると上機嫌になって、普段聞けないようなこと質問したりできるじゃないですか。先生もしゃべりたがりだから、若い人とコミュニケーション取りたいし。そういう機会なんだから、積極的に話しに行くとか「研究が難しくて」みたいなこと言えばいいのに、端っこのほうで同期同士で飲んでたりしてる。

――せっかく先生いるのに、みたいな。

関口:飲みの席でさえ、経験の差を感じる。俺、今度サークルの後輩たちに、大学生の飲み方講座みたいなのをやろうと(笑)

――おもろいんだけど、それ(笑) 何するの。

関口:強く飲ませてくる先輩とは関わらないようにしましょう。飲めなくても、別に行くんだったら全力で楽しめばいい、みたいなところから始まり、おごられたら「ありがとうございます」とか。

大堂:いや、大事かもしれない。

関口:吐き方も、気持ち悪くなったときに、「すいません、ちょっとお手洗い行ってきます」って、しゃっと吐いて、便器を汚さないとか。

――お店汚すと出禁になっちゃうからね(笑)

関口:というのが、本当、今少なくなっているから。そういう、半分笑い話なことをうまく伝えてあげたいなって。

――大堂さんはそういうのを危惧して、色んな経験させてあげようと?

大堂:自分も寮生活してて、家と学校の往復じゃ学べないこと、たくさんあったから、それを今の世代にも提供できればなっていうのはあるね。関口くんが1年生とか2年生ぐらいのときはどういう生活してた?まだ、mulberryもやってなくてさ。

関口:僕もそういう経験が少ない側の人間だったんですけど、ちょっと違うのは、節約するって決めてたんですよ。頻繁に家に帰って昼飯とかお弁当、自分で作ったりして、そのせいで100万たまって。将来、何に使うかわかんないから、金はためこむみたいな。友だち付き合いも、そんなによくはなかった。

大堂:くるべきタイミングのときに備えて、みたいな。

コロナ世代、爆誕。

――西くんはどう?関口くんの、今の話を聞いて。

西:やっぱり僕ら、コロナ世代というのもあるので(※大学2年生)。

――コロナ世代!?

西:コロナ世代一期生は、まじで智さん(※関口くん)が言ってるようなことが、より一層加速してる部分もあるので。オンライン授業で、家でずっと1日完結するってことも結構あって。本当にコミュ力高いとか、1人じゃいられないって子はグループつくってたりとかするんですけど、そうじゃない子は、ずっとその遊びの世界を開くことがないんだと思います。僕はたまたまインターンをやってて、そこの先輩がダーツとかビリヤード連れてったりしてくれたのが、本当に幸運だったんですけど。

――今、よけい加速してるのか。

西:その傾向はあるとは思います。あくまで僕の主観なんですけど。

大堂:入学式もオンラインだったんだよね。

――友だちがいないっていう人もいるの?

西:初めの半年間、友だちいなかったみたいなのは聞きますね。

関口:その年の最初のときが一番ひどかったんだよね。大学で初めて会って、「え、お前こんなでっけえの」みたいな。画面越しだから、身長がわかんないみたいな。

西:クラス会も、一番最初はZoomだったんですよ。Zoomで自己紹介して。

――しかし、コロナ世代ってワード、すごいね。私ゆとり世代だったんだけど、さらに悲惨なワード出てきた。

西:悲惨ですよね、本当。でも、コロナがあったから熱風寮に来たようなもんですからね。まともに生活送ってたら、たどり着かないかも。

――どうやってたどり着いたの?

西:去年の今頃、コロナで一人暮らしで、なんか悶々としてた時期があって。そんなときにTwitterで寮の人がつぶやいていたのを見て熱風寮を知って、来たんです。幸運でしたね。

大堂:コロナ世代って不遇だよね。だからもっと、コロナ明けたらさ、そういう経験させてあげたい。させてあげたいっていったらおこがましいけど、ご飯おごってあげたい。

――そうですよね。その2年間の分。

関口:不遇っていうか、危機ですよ、本当に。その人たちが社会人になったときにバトンがつながらないんです。

西:確かに危機ですね。そういう意味では。

大堂:俊くん、なんか立ち上がってよ(笑)

西:「先輩、おごれーー」みたいな?(笑)

東京で打ちひしがれたら、戻ってくるのは恥じゃない

――じゃあ次は、何でIQOL(糸島九大生オープンラボ)を立ち上げたのかって話を聞きたいです。

大堂:やっぱり糸島の企業も九大生を本当は採用したいし、いずれインターンでも雇いたいんだけども、そこの接点がまず全くない。だからフェーズとしては、まずその出会う場をIQOLでつくって、そこからインターンとかで関わりを深めて、Pターンとか就職とか、一緒に事業を立ち上げるとかまでいってほしいなと思って。そしたらたぶん糸島ももっと活性化するし、面白い会社も生まれるかなと思って。

IQOLでの糸島の企業と九大生の交流の様子

――なるほど。

大堂:九大生にとっても、座学じゃない学びができるフィールドがもっとあったほうがいいかなって。糸島って、それこそ課題だらけだから、そこを学生の目線で解決できる場があったら、すごい経験値がつくかなと思って。そういうフィールドワークやってる先生は少ないよね。

関口:フィールドワークはコスパが悪いんだと思うんです。学生の負担と教員の負担が単位数に全く見合わない。6とか8あっていいのに、半年やって4単位とかだから。でもフィールドのほうが圧倒的に学びはある。それでたぶん、楽しくなるし、福岡好きになると思うんですよ。その機会がないのはもったいなくて。

大堂:そうね。

関口:九大のよさっていうか、大学まちのよさを十二分に満喫したうえで、社会に出て活躍してもらって、海外とか行ってもらっても構わないし。でも東京とかで打ちひしがれたら、「やっぱり福岡いいな」ってなるはずなんですよ。そしたら、別に戻ってくるのは恥じゃないし。堂々と戻ってきなさいよ、みたいな。「お前のやってきたネットワークもここにあるから」みたいな。

――確かに確かに。

関口:どうせ、都会行くと疲れるでしょう、絶対。

一同:ははははは(笑)

関口:言うて、都会で食ってた人はスキルがあるから、田舎来ても問題ない。食っていけるだけの場所はあるし、特に糸島、迎え入れてくれるじゃないですか。それでいいんだよ、みたいなのを。その結果、Pターンみたいなのにつながってもいいし。その思いが、すごい共感したんです。僕も一緒にやってるうちに。

大堂:あと、地方に来たら重宝されることない?相対的に価値はやっぱ上がると思います。プレーヤーが少ないから。

関口:生活コストも安いですね。物価的なことでいうと、大体、東京の60パーぐらいらしい。家賃10万のところが6万で住めちゃう。てことは、年収が60パーセントになっても、究極、生きていける。

――それはほんまに思う。

関口:東京に行けばもう10パーセントぐらい賃金もらえるんじゃね、みたいに言ってるけど、それは損だぞ、みたいな。絶対、地方でその90パーセントもらえる企業のほうが得できる。貯蓄も絶対、そのほうがたまるのに。

――そうだね。

関口:その価値観は、大学生のうちではなかなか獲得できない。奨学金とかもらってるやつのほうが、そこらへんのアンテナ、高いのかもしれないですけど。やっぱその、お金の動きというか、社会構造がまだはっきりとは見えてないから。お金、もらえるほうがいいだろうみたいな。

大堂:そうね。

関口:どうしても見ちゃうんで、仕方ないことだと思うんです。その結果、なんかUターン、Iターンみたいなのが起きてるの。それはなんか、Pターンとは違って、ある意味末路じゃないけど、自然現象というか。だからそういう言葉があるわけで。東京に栄養を吸われた人材が能力も持ち帰らずに、最後に、みたいな。

大堂:そうね。もやし系になってね。

――もやし?(笑) もやしになって戻ってくる? 

関口:だから言ったのに。だから東京行くなって言ったのにって。

――こないだ就活中の熱風寮生が糸ラボに来て、「会社入ってみて、合わなかったら辞めてここに帰ってきます」みたいなこと軽く言ってて、そういうふうに言える場所があるって、いいよなって(※糸ラボ=シェアオフィス「糸島よかとこラボ」)。

大堂:それ、いいと思うね。選択肢があるっていうのはね。別の寮生も春から東京のベンチャーにいくんだけど、「大変そうやろ」って言ったら、同じこと言ってた(笑)「行き詰まったら帰ってくるんで、寮の管理人に雇ってください」って。

――最後に行く場所があるって、めっちゃ大きいですよ。私、別に京都に対して思えなかったから。地元の人とのつながりとかそんなにあったわけじゃないし。

大堂:大学っていうバックグラウンドがあるから住めてるみたいな。

――そうそう。だから、戻っても受け皿があるとは思えない。会社辞めても戻ってこれる場所があるっていうのは、めっちゃいいなと思う。

大堂:そういうの、増やしたいね。

西:そう言われてみると確かに、実家のような安心感ありますね。

大堂:それはもう、作戦どおり(笑)

関口:結局、疲れて仕方なく戻ってくるんじゃなくて、戻ってこれる環境があるんだって安心をした上で、そこで次にばりばり活躍できるみたいなことですね。そしてぜひ能力も持ち帰ってほしいですね(笑)

――――九大生の中に、挑戦して、失敗したら戻ってきたらいいやっていう、実家みたいなものが糸島に対して醸成されていけばいいですね。今日はありがとうございました!!

編集後記

新旧九大生座談会、いかがでしたか?
辛辣なことを言いながら時折オカンのような優しさを見せる、関口くんのツンデレ感あふれる魅力が記事から伝わったらいいなと思います(笑)
そして、私は話を聞きながら「ダーツもビリヤードもやったことない…!!」と内心焦っていたことは秘密です(笑)

そしてそして、mulberry houseでバイトしていた西くんはなんと、4月から新店長に就任します!お店には週2くらいで出ているみたいなので、ぜひTwitterなどでチェックして遊びに行ってみてくださいね^^

今回もお読みいただきありがとうございました!次回もお楽しみに♪

写真:Chinamu Sashikata
文:山部沙織

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