こんにちは、「イトフェッショナル」ライターの山部です!
九州大学のキャンパスが福岡市の六本松・箱崎から糸島半島に完全移転してきて、もうすぐ4年。年々ユニークな移住者が増え存在感が増している糸島に九大生がやってきたことで、一体どんな化学反応が起きているのでしょうか?
今回は、糸島の古民家を改修した九大生のための学生寮「熱風寮」、九大近くに九大生の憩いの場として作られたカフェ「mulberry house」、糸島の企業と九大生を繋げるプラットフォーム「IQOL(糸島九大生オープンラボ)」に所属する3人に語り合ってもらいました!
最初は「糸島×九大の可能性」という超真面目なテーマだったはずが、話はどんどん思いもよらぬ方向に…!真剣に九大生を想う3人の白熱トークの行方を、ぜひお楽しみください。
熊本県出身。九州大学理学部物理学科、総合理工学府大学院を卒業。大学時代は九大の自治寮で生活。その後丸紅に入社し、東京では7年半生活。退社後、2017年に家族で糸島にPターン(※)し、地域にひらかれた学生寮「熱風寮」立ち上げ。現在はmulberry house、シェアオフィス「糸島よかとこラボ」、糸島よかとこラボが立ち上げたIQOLを運営。
※Pターン:若者が大学時代などに過ごした拠点が“第2の故郷”になり、就職して都心や海外で経験を積んだ後に、その地に戻ってくることを指す。大堂の造語。
群馬県出身。九州大学航空宇宙工学博士課程3年生。熱風寮「前原西」の住人。mulberry house、IQOLを運営。
長崎県出身。九州大学法学部2年生。熱風寮「前原西」の住人。mulberry houseでアルバイト中。IQOLにも時々参加。
筑前前原に住むのはレアキャラ
―― ではまず「糸島×九大の可能性」というテーマからいきたいんですが、そもそも九大生は糸島の人と触れ合ったり、糸島で遊んだりしてるんですか?
西:割と、糸島のthe観光地みたいなところは、遊びにいってる子が多いと思うんです。友だちも糸島でドライブしたインスタとかはよく上げてて。
――そうなんだ。観光客みたいなことしてる?
西:そうだと思います。
大堂:交通手段は?
西:男はチャリかな。あと、普通にレンタカー借りて乗ってたり、車を持ってる人は自家用車。でも、地域の人とのディープな関わりはあんまりないと思います。
――前原らへんとかには、あんまり来てない?(※前原は糸島の中心地)
西:来てないと思います。体感。
――みんな住んでるのが九大学研都市とかなんでしたっけ。
大堂:そうだね。ちょうどいいのが、九大生協が今、テナントとかマンション案内してるでしょ。そこにエリアごとの九大生の人数の情報が載ってて。

――おお!
大堂:読み上げるね。学研都市エリアが2500人。周船寺エリアが2000人。富士見と田尻が900人で、元浜と九大新町が2300人。伊都の湯どころとかある九大の麓の泊エリアが800人。今宿エリアが300人。
――九大周辺か西のほうか。だから糸島で九大生あんまり見かけないんだ。
西:遊びに行くのも天神らへんですしね。大学で自己紹介するときに「筑前前原に住んでます」って言ったら、「えー!それ、めっちゃすごいやん」とか、「レアキャラ」って言われるんですよ(笑)
――レアキャラなんだ(笑)
西:ガチャでいう星5、ぐらいな感じなんですよね。
関口:九大が移転してきたとき、軒並み学研都市・周船寺の昭和バスの路線上に住む場所を集めたんですよ。業者がそこにどんどんマンション建てて生協の契約物件もそこに集中した結果、そのあたりが学生マンション街として成立しちゃって。
――なるほどね。結構、大人の事情っていうか。
関口:与えられてる情報がそもそも、最初からそれなんで。
大堂:やっぱり、受験生とか新1年生、わかんないよね。
関口:前原あたりは、まじでわかんないと思う。こっちのほう、そもそもマンションが、家族向けマンションでしょっていう。
大堂:前原が、1Kとかないんだよね。単身向けのマンションが少ない。
関口:同じぐらいの値段のはずなんですけどね。何ならこっち、1LDKとか下手したら2DKとか、リビング2つあって3万円台みたいなバグった賃貸がたまにあるから。風呂は新しくないけど。
「資本金100万、俺出せますよ」
――mulberry houseをつくった理由としては、そういう糸島と九大生の没交渉的な関係を改善したいみたいなのもあったんですかね?
大堂:元々は、九大生の集まれる場所が少ないから、学生の遊び場、発散できる場所を作りたいっていう問題意識があって。寮だったら特定の人しか入れないから、それ以外の、もっと開かれた場所を探してて。辻さんっていうもう一人の運営者と内覧にいったときに、ちょうど関口君が僕らを見つけたんだよね。

関口:僕は学生やりながらビジネスもやりたかったので、何かやってる人として実店舗がほしかったんです。で、よさそうな店を見つけたけどずっと閉まってて、どうしたもんかなと思ってて。ある日店舗の前を通ったら中に人がいて、「こんにちは」って入って行ったのが初めて。
――それが初めてなんだ!運命の出会い(笑)
大堂:いきなり若造が名刺渡してきたから、こいつ絶対怪しいやつやなと思って。名刺持ってる学生って怪しいやん(笑)
――確かに(笑)
大堂:そのときは、僕らが先に内覧させてもらってたから、僕らが条件合わなかったら彼に、みたいな感じで思ってたのね。そしたらその日の夜ぐらいに、長文のメールが関口君からきて。
――どういう内容?
関口:僕も大学入ってからずっと寮だったし、何か共有できるものを感じるので、一緒にやらせてもらえればうれしい、みたいな感じですね。
――そのときはもう、カフェやるっていうのは言ってたんですか?
大堂:いや、まだカフェの構想も全くなくて。関口君とコメダ珈琲でお互いのビジネスプランを提案しあったよね。
関口:俺は、モナカとアイスを作って売るっていうゴミなビジネスプランを。
大堂:僕は当時、うどん屋さんか卵かけごはん屋さんをやりたかった。学生が安く、おいしく食べられるかなって。
――なるほど。
大堂:結局、もうちょっと気軽に老若男女入れる場所とか考えると、カフェに落ち着いた。あと、関口君に俺がびっくりしたのは、当時、100万以上貯金を持ってて。「資本金、俺、出せますよ」って言って。
――学生で?すごい。
大堂:そう。で、みんな100万ずつ出した。コミット度半端ねえなって。
関口:社会人になっちゃったらすぐ稼げるじゃないですか。どうせあぶく銭だし。
――あぶく銭?(笑)
関口:変なことに使うんだったら、思い切って突っ込んで投資しようと。その結果、直後に貯金が10万を切って。
――思い切ったね(笑)
関口:やばい生活が始まる。ちょっとピンチだった(笑)

それ、九大生とのトークに必要なの?
――西くんは去年の10月からmulberryでバイトしてるんだよね。何で入ろうと思ったの?
西:僕はもともとコーヒーがすごく好きで、毎日コーヒー淹れて飲んでて、その姿をここ(※熱風寮「前原西」)で大堂さんが見てて。コーヒー好きなんですっていうお話をしたら、mulberryで働いてみないかって打診を受けて、ぜひと。
――どうですか、やってみて。
西:もともとコーヒーが好きだから、もうめちゃくちゃ楽しいですね。今、バリスタの浦川さんという方がいらっしゃって、なんか本当に、コーヒー教室を受けてるような感じだから。むしろ、僕がお金払わないといけないんじゃないかって思わせられるほど、いろいろ技術を教えてもらっていて。
――結構、九大生も来てるんですか?
西:そうっすね。九大生と、あとは割と常連さんで、地域の人みたいな。
大堂:俊くん(※西くん)来てから、九大生増えたよね。
――知り合いが来てる?
西:それもありますし、あとは、九大生が「友だちがここ、お勧めしてたから」って来てたりとか。勉強するのに集中できて、かつ、なんか雰囲気もいいところみたいな。
――トークとかもしてるの?
西:頑張ってやってます。全然プロ野球を見ないんですけど、情報仕入れたり。
――野球?九大生とのトークに必要なの?(笑)
西:九大生もそうだし、結構、常連さんで好きな方多くて。話を振られるんですけどあまり知らないんで、なんかもっと次元高く話できるように。
――美容師さんみたいな努力を(笑) じゃ、憩いの場的なものにはなってるってことですね。
西:そうですね。だとは思います。
――大堂さんと関口くんは、もっとこうしたいとかはあるんですか?
関口:まだ認知度が低いので、もっと色んな九大生に来てもらって、色んなことができる場所にしていきたい。奥の和室も将来的には貸し出したいんですよ。たこパとか鍋パもできるし。色んな用途に使えるっていうのがまだ周知できてないので、そこが今後の課題ですね。
大堂:そうね。学生マンションで5~6人集まるとかも厳しいし、和室とかフリースペースでわちゃわちゃやれる場がほしいって話は聞いてるから、需要に応えていきたいね。
学生にとっての就活市場の危うさ
――じゃあ話変わって、九大生の進路ってどんな感じなんですか?
関口:ちょうど今朝、風呂上がりに俊(※西くん)と就活市場がきもいっていう話をしてて。文系と理系でやり方が違うんですけど、しゃべっていくと、文系のきもさと理系のきもさがある。
――きもい?(笑)
関口:結局、文系は他の有象無象と自分を差別化するために市場価値を高めてって、周りを蹴落として、大量にトライアンドエラーやって情報戦で戦ってくみたいな。周りからの競争意識というか、強迫観念に駆られてやる就活が根付いてて。
西:とりあえず簿記取っとこうとか、とりあえずITパスポート取っとこうとか。
――そんな感じなの?資格で突破しよう、みたいな。
西:やっぱり履歴書で若干差別化を図るとか、プラスアルファの糧を狙うみたいな、くそきもいようなことになってて。学ぶこと自体はいいんですけど、就活のためにそれをやるっていうのがなんか。
関口:で、理系は理系で、就活自体は推薦で決めるから、全然楽なんですよ。
――研究室からそのままいけるんですね。
関口:でも、就活する人は全然気付いてないんですけど、引いて見たら、結局は企業にとって都合のいい学生を一本釣りさせるための仕組みでしかなくて。その企業から大学には当然、研究資金みたいなもの、一定は流れてるだろうし。何なら、推薦で行ったからにはそう簡単に辞めたら、大学は信用を無くすので。結局、推薦使ったら背負わされるのはカルマだっていう。
大堂:そういう意味では、理系のほうがちょっと、実は危ういんじゃないかな。文系は、とはいえ、自分を見つめる機会も多いやん。理系は見えてなくて、自分の相対価値もわからずに、とりあえずこの研究をやってるからこれかなとか。研究者以外の道をあんまり考えないよね。それ、九大の特徴かもしれない。
関口:やってきた研究と違うとこに入ったら、「お前、何大学で勉強した」みたいな風潮もあるし。そんなの、本当はよくないんですよね。
大堂:そうね。
関口:技術系の企業って、経営基盤が堅いですからね。そう簡単につぶれないっていうのがあるから。戦わせられる人材を一定数、必ず毎年取りたいってのもあるし。
――推薦はどういう企業が多いんですか?
関口:基本的には大企業ばっかりですよ。向こうから枠がくるんです。
――じゃあ、九大生はみんな大企業志向というか、理系は研究室推薦で大企業いって、文系は総合職の大企業とか目指して、基本、福岡を出ていくって感じ?
大堂:どうだろう。でも、実際、俺らのときはまだ、福岡に残りたいとか、九州残りたいからって、公務員いく人も多かった。あとは理系でも一部、国交省とかああいう、いわゆるエリートを目指す人もいたけどね。本当、1割に満たないぐらい。
<後編につづく>
https://itofessional.com/2022/03/21/talk-9/