「糸島愛薄れた？」更新途絶えた糸島の超人気ブログ著者・本橋へいすけさんに突撃してみた

ブログを更新しなくなった理由

――へいすけさん、お久しぶりです！突然ですけど、私と初めて出会った日のことを覚えてますか？

覚えてるよ(笑)　沙織ちゃん（※筆者）が何年か前に東京で働いてたときに、「愛しの糸島ライフ」を読んで会いにきてくれたんだよね。

――覚えててくれたんですね！当時、東京砂漠で疲れ果てていた私の心に、へいすけさんが描くユートピアのような糸島生活がドンピシャで刺さって、「この人の話を聞きたい！」と、会いに行ったんです。そしたら、ブログ通りのすごい優しい人で、親身に相談に乗ってくれて（※現在は移住相談はされていませんのでご注意ください！）。

懐かしいなあ～。

――会社を辞めて移住したいって言った私に「絶対食いっぱぐれることはないから、明日にでも来たらいいよ」って言ってくれて、それで会社を辞める決心がついて。私の人生を変えてくれた人といっても過言ではないです。

全員にそう言ってるわけじゃなくて、ちゃんと慎重に人を見てアドバイスしてたよ(笑) 沙織ちゃんはスキルもあるし、独立しても大丈夫そうだと思ったからね。

――嬉しいです。私、へいすけさんが浜辺にうち上がったワカメを拾って家で茹でて食べる記事が大好きなんですけど、今でも食べてますか？

そんな記事も書いたね～。いや、今はもうやってない(笑)

――それなんです！へいすけさん、最近全然ブログも更新してませんよね。あんなに糸島を愛していたのに、もうその愛は薄れてしまったんですか？

いや、糸島への愛はあの頃と変わってないよ(笑)　僕がブログを書き始めた目的は達成されたから、もういいかな〜と思って….。

――ブログの目的って何なんですか？

自分が元々会社員の頃、糸島に移住したいって思ったときに、参考にできる情報がほとんどなかったんだよね。それで僕も困ったし、移住したい人の9割が会社員なのに会社員のための移住情報がないのはおかしいんじゃないかって、そこを解決したくて。

――その目的は果たしたってことですか？

そうだね。会社員のために必要な情報も網羅したし、糸島の認知度も上がったし、質の高いブログを書くブロガーさんも増えて、もう自分の役目は終わったなって。

月50本書いても読まれなかった下積み時代

――そうなんですね…ちょっと寂しいです。へいすけさんにとっては過去の話かもしれませんが、ファンとして気になるので、もう少しブログの話を聞かせてください！今だから言える裏話とかありませんか？

うーん、別に当時も隠してなかったんだけど、「愛しの糸島ライフ」って、最初は全然結果が出なかったんだよね。最終的には月13万PVまでいったんだけど、始めた頃は月に50本記事書いても、全くアクセスが増えなくて。それからブログ運営についての有料記事を片っ端から読んだり、プロブロガーに添削を受けたりして、めちゃくちゃ勉強した。

――プロブロガーに添削？

プロのブロガーに記事を見てもらえる「本気の添削」っていうサービスがあって、そこに記事出すとすごい量のダメ出しが返ってくるの(笑)　それを見て「まだまだだな、自分」って、言われた通りに書き直して、っていうのを何度も繰り返してた。

――私は人気ブログになってから知ったけど、それまでに厳しい下積みの時代（？）があったんですね…。

あと、これは知らない人も多いんだけど、芥屋にある「トトロの森」(※今では糸島の雑誌で必ず紹介される、「となりのトトロ」に出てくる木のトンネルに似た森)って、僕が名付けたの。「トトロの森」って他の都道府県にもあって、毎月1000件以上Googleで検索される人気ワードだったから、「これを糸島に紐付けたら、糸島を知らない人にも知ってもらえる！」と思って。

――えー！「ここ、なんかトトロっぽいな」って思って書いたんじゃないんだ！そんなに戦略的にやってたんですね。

そうそう。それとその頃、糸島の情報って二見ヶ浦（※夫婦岩や海辺カフェがある、糸島の人気観光スポット）と前原（※市役所がある）中心で、二丈(※へいすけさんが住んでいるちょっと田舎の地域)は疎外感があったんだよね。だから記事にさりげなく二丈のお店を入れ込んで、二丈の魅力を知ってもらうのを意識してやってて。春のお花見スポット紹介記事でも、二丈渓谷の桜並木を紹介したり。

――ゆらりんこ橋（※二丈にあるつり橋）の、桜と菜の花が同時に見られるところですよね！私もブログ読んで見に行きました。

僕がブログで紹介するまでは知る人ぞ知るって感じで、見に来る人全然いなかったの。今めっちゃ多くて、ちょっと記事を書いたのを後悔してます(笑)

「この手帳で何万人の人生を変えられる」

――今や桜の時期は渋滞ができてますもんね…。「愛しの糸島ライフ」がヒットして、テレビとか雑誌の取材もたくさんきて、へいすけさんめちゃくちゃ有名になったじゃないですか。それで自分の中で何か変化した感じってありますか？

有名になったこと自体では特にないかな。僕、「目立ちたがってる」とか「有名になりたがってる」と思われがちなんだけど、全然そんなことないから！(笑) 一時期は糸島でどこに行っても「へいすけさん！」って言われて「ヘタなことできないな…」って感じで、僕自身は表舞台から隠居したいくらい(笑)

――ええ！全然隠居したいようには見えないんですけど(笑)

それよりも一番の変化は、SEOを身につけたことでビジネスの基礎体力が付いたことかな。僕のやり方は事前に検索ボリュームと競合を調べて、8割勝てるっていう勝負にだけ行く。これがブログだけじゃなく、YouTube、インスタ、オンラインサロン、ビジネス、全てのものに応用できるから。

――それでブログ以外にも手を伸ばそうと！へいすけさん、ブログをやめて今は何をしてるんですか？

feppiness株式会社っていう会社をつくって、オンラインサロン運営したり、手帳つくったり、音楽活動したり、コーヒー定期便やったり、コンサルしたりコーチングしたり、あとは…。

――多いです多いです！(笑)　そんなにいっぺんに頭に入らないんで、主要なものだけお願いします。

主要なものでいうと、「foryou」っていう、事業主（※フリーランスや起業家、経営者など、自分で事業をしている人）のためのオンラインコミュニティをやってる。オンラインサロンっていう方がわかりやすいかな？事業主の発信やビジネス全般をフォローしたり、認知科学に基づくコーチングをしたり、みんなで海外に行って合宿したり。マインドの整え方から実際のスキルまで、事業主に必要なものが全部ある、インフラ的な感じにしたいなと思ってて。

――なるほど。

あとは、人生の純度を上げる手帳『pure life diary』っていうのを作ってる。僕、一昨年コーチングを学んで「これは人の人生を変えられる」と思ったんだけど、自分が直接コーチングできるのは頑張ってもせいぜい月数十人くらい。でもこのノウハウを手帳に落としこんだら、何万人の人生を変えられるかもしれないと思ったの。

――人が変わっていくのを見るのが好きなんですか？

たぶん、ぼくの心はそんなに綺麗じゃなくて(笑)　1人1人のことというより、社会の課題を自分がつくったサービスで解決して、変えるのが楽しい。何かを攻略するの自体が好きなんだよね。その結果、変わる人がいっぱいいるといいよねっていうのは、もちろんあるんだけど。

――ここは、人が変わるのを見るのが好きって言ってくれた方が美しかったような…(笑)独立してから大変だったこととか、失敗はありますか？

大変だったことはあんまりないね。一時的にでこぼこはしたりするけど、大きな失敗はない。嫌な感じかもしれないけど(笑)

――嫌な感じです(笑)

もちろん、小さな失敗はいっぱいあるよ。ただ僕はあんま、失敗を失敗と思わない。失敗しても片っ端から忘れていくっていうのもあるんだけど(笑)　事業主の人に教える立場だから、失敗した経験があったほうがいいし、さっきの「ブログで月に50本書いてもうまくいかなかった」っていうのがあると、「あ、へいすけさんでもそうだったんだ」ってなるから。

フリーダイビングが癒しの時間

――なるほど。ワーク・ライフ・バランスってどうですか？へいすけさんって、ずっと仕事してるイメージです。

ワーク・ワーク・ワークみたいな感じだね。沙織ちゃんぐらい距離が近い人からはずっと仕事してるイメージかもだけど、常に移動して旅してるから、SNSだけ見てる人には遊んでると思われてる(笑) 

――遊んでるように見えて、隙あらばオンラインサロンのメンバーさんにメッセージを返してますよね(笑)　それはストレスじゃないんですか？

それほどストレスじゃないね、仕事は楽しいし。でも、僕も今40過ぎて、集中力がだんだん続かなくなってきて(笑) 前まで1日15時間働いても全然余裕だったけど、最近6時間ぐらいで疲れちゃう。

――じゃあ、ちょっとワーク・ライフ・バランス考えないと、みたいに？

オフをつくったほうがいいのかな。絶対要らないと思ってたんだけど(笑) 打ち合わせとかの対外的な予定がない日はちゃんとつくってて、でも仕事はずっとしてたんだよね。完全なオフもあったほうがいいのかなっていうのが、ここ半年ぐらいの悩みだね。

――最近フリーダイビングやってるのをSNSで見ましたけど、それは完全オフではないんですか？

朝2時間潜ったら午後仕事したり、けっこう仕事してるね。フリーダイビング、いいっすよ。大人になって初めてハマった趣味かも。デジタルデトックスにもなるし、力を抜いて頑張らないことが大事なスポーツだから、メンタルが整う。

――へいすけさん、手帳も「感性を開く」みたいなのじゃないですか。今そういう感性系に興味がいってるんですか？

僕、実はもともと感覚派なのかもしれない。戦略とかは後天的に身につけたスキルで。いつも苦手なところをチームのメンバーに助けられてて、1人じゃ何もできないし。

――意外ですね。どういうのが苦手なんですか？

昔はできてたはずの社会人の一般的なことが、どんどんできなくなってきてて(笑)　スケジュール調整とか管理も今、全部任せてるんだけど、じゃないとダブルブッキングとか返信をしてないとかが起きたり。構想を立てるのは好きなんだけど、それを形にしてく作業が苦手で、そこは別の、そういうのが好きな人にやってもらってて。

――へいすけさんの人生で幸福度のグラフみたいなのを作るとしたら、どんな感じですか？

それ、今あります！前にチームメンバーでやったんだよ。

――すごい、めっちゃぐにゃぐにゃ(笑)　下に急降下してるのって、何があったんですか？めっちゃ多いんですけど。

25ぐらいまでのやつは全部失恋ですね(笑) 恋愛が人生の9割を占めてたんで。初めての彼女できる、振られる、みたいな。

――さっき話聞いてて、「こんなぐにゃぐにゃじゃなかったけどな？」って。恋愛だったか(笑)

恋に左右される人生かもしれないですね。

――仕事は何も大きな失敗ないのに、意外にも弱点は恋愛だったんですね…。

僕、恋愛が3~4年しか続かなくて、それが課題ですね。今後は穏やかな女性関係を築きながら、平和な日々を過ごしたいです(笑)

事業主向け老人ホームをつくりたい

――応援してます(笑)　何か今後やりたいことってありますか？

事業主向けの老人ホームを作りたい。僕たちの老後って独身だったり死別だったりで1人の人も増えてるだろうけど、みんな一緒だったら寂しくないし。老人ホームの中に託児所を作って、地域のママさんが子どもを預けられるようにしたら、僕らのボケ防止にもなっていいなあ、とか。

――楽しそうですね、その老人ホーム(笑)

80歳ぐらいになって、「次の事業、これやろうと思ってるんだよ」みたいなおじいちゃんおばあちゃんの集まりだったら、めっちゃ面白くない？(笑)

――みんなで雑談してたら事業生まれるみたいな。

もう80ぐらいだったら、みんなお金持ってるだろうから、「じゃあ若者たちにやってもらおう。みんな、100万ずつ出して！」みたいな(笑)

――100万はすごいな(笑)

ちょっとボケ始めてるから、桁間違えて1000万振り込んじゃったりして。「もう使え！どうせあの世に持ってけねえんだから」って(笑)

――なんか日本、元気になってそうですね(笑) ぜひお願いします。

翻訳機能とかもできてるだろうから、日本だけでなく、世界の人ともつなげてやれたらいいな。それこそ、80歳になっても、みんな恋ができるようにね(笑)

――うまいこと落としていただいて(笑)　今日はお話聞かせていただき、ありがとうございました！！

編集後記

久しぶりの更新になりました。
いかがでしたか？
なかなか思い通りの記事にならず、こねくり回しているうちにインタビューから7か月くらい経ってしまったのですが、へいすけさんは全然怒らずに「僕のこともっとディスる感じにしてみたらどう？面白くなるなら僕は悪く書かれても全然いいよ！」と慈悲深いお言葉をくださり、この記事ができあがりました。

ちなみに記事で「最近疲れやすくなった」と言っていたへいすけさんですが、あれからパーソナルトレーナーさんにお願いして体のケアをするようになり、現在は集中力が回復してきているそうです（めでたい）。

また、「pure life diary」を世界で売り出すなど、今後は事業を世界展開していくそうで、「ブログは書けないけど、今後は世界で繋がったご縁を糸島に還元する形で貢献できたら」とのことです＾＾

それでは今回もお読みいただき、ありがとうございました！
次回もお楽しみに！

写真：川岸勇介
文：山部沙織